AMPULE Innovation firm

REPORT

Insight

2024/04/08
調査

日本のビューティーレギュレーションの“いま”と“これから”<ampule magazine Vol.05より>


本号では「変わるビューティーレギュレーション」と題し「タトゥー」「ボディへア」「カラーメイク」「美容整形」の4つのテーマを扱ったが、それぞれに対し日本の生活者はどんな印象を抱いているのか、意識調査を実施。生活者の価値観の変化について探るとともに、日本のビューティーレギュレーション、いわば「美しさの表現」は今後どのように変化していくのかについても分析する。

Q.個性的なメイク(カラーメイク等)のイメージは?

<ポジティブ:64.4%>
気持ちが明るくなるから(29歳女性)
気分があがるので、年齢が上がるにつれカラーメイクに興味をもつようになりました(39歳女性)
個性をアピールできるし、好きなファッションに合わせて自分を表現できるから(25歳女性)

<ネガティブ:15.3%>
奇抜で浮くから(28歳女性)
勇気がないから(27歳女性)
TPOに合わせたスタイルなら良いと思うが、個性的すぎるメイクは見る相手を考えてないと思うので
(47歳女性)

<わからない:20.3%>

Q.「ボディヘア」のイメージは?

<ポジティブ:36.7%>
自然のままの自分を認めてあげることはとても良いことだから(38歳男性)
一般的に不潔だというイメージが強い脇毛などをあえて伸ばしたままピンク色などに染め
るおしゃれもあるため(23歳女性)
欧米で流行っているから(38歳男性)

<ネガティブ:30.0%>
清潔感がないと感じるから(48歳男性)
男性なら良いが、女性だと見た目が悪い気がする(48歳女性)
アジア人は体毛の色が濃いので目立つ(36歳女性)

<わからない:33.3%>

Q.「美容整形」のイメージは?

<ポジティブ:49.8%>
自分のなりたいようになれるので、リスクを承知の上なら良いと思う(29歳女性)
美しくなりたい、と思うことは悪いことではないし、そのために努力できる人はすごいと思う(30歳女性)
昔は隠すことが多かったけど、今は宣言する人も増えてきているから(45歳女性)

<ネガティブ:21.1%>
親からもらった身体を外科的にいじるべきではない(44歳女性)
持って生まれた良さを活かしたい(41歳女性)
自分の身体にメスを入れることに、抵抗を感じるので(45歳男性)

<わからない:29.1%>

Q.「タトゥー」のイメージは?

<ポジティブ:29.5%>
外国では普通にいるから(34歳女性)自己表現だと思うし格好いい(24歳女性)メイクのようなものだと思うから(34歳女性)昔より今はファッションタトゥーが増えてきて可愛いと思います(24歳男性)

<ネガティブ:46.8%>
反社会的なイメージだから(43歳女性)入れない施設もあるし、やっぱり白い目で見られることのほうがまだ多いと思う(31歳女性)自分の身体に傷をつけるものだから(29歳女性)

<わからない:23.7%>

<考察>

「カラーメイク」はポジティブ回答が6割以上で、多くの人が受け入れている様子が見てとれる。「気持ちが明るくなる」という意見が多く「年齢が上がるにつれて興味を持つようになった」という声も。年齢に囚われずにメイクを楽しもうというメーカーの取り組みも増えており、こうした影響もあるのかもしれない。
「ボディヘア」はポジティブ/ネガティブ/わからないの回答がほぼ同率で割れた。毛の生え方は男女差が出やすいこともあってか、性別での回答の差も大きい。女性のほうがポジティブ回答は約10pt低く、「脱毛や剃毛をしたほうがいい」という考えの女性が根強いとも受け取れる。一方で男性のネガティブ意見、つまりはボディへアを活かすことに否定的な声も2割以上あった。本調査では設問の対象を男女で区分することをあえてしなかったため、男女どちらをイメージしての回答かで結果が違う可能性もあり、もう少し調査が必要そうではあるが、いずれにしろ生活者の中で現状ではファジーなテーマといえそうだ。
「美容整形」は約半数がポジティブ回答という結果に。回答理由を見ると、整形はコンプレックスの解消目的だけでなく「より美しくなるための努力」として浸透していることがうかがえる。
対照的に「タトゥー」はネガティブ回答が半数近くで、4つのテーマの中で最も多い割合となっている。ファッション感覚でおしゃれという声も見られるが、ネガティブ派が多い理由としては「反社的なイメージ」「社会的に制限がかかる」の2点が大きい。
「美容整形」と「タトゥー」はどちらも身体に傷をつける行為という点で共通しているものの、イメージに大きな差が表れている。とはいえ「美容整形」も以前はネガティブなイメージが確かにあった。それが最近ではSNSで整形情報をシェアする文化が活発になってきており、もはや整形=隠すものではなくなってきている。もちろん美容外科業界の技術進歩や情報発信の成果ともいえるが、SNSの果たした役割は大きい。今後のビューティーレギュレーションがどう変わるのか、SNSにはそのヒントが詰まっていそうだ。

Q,「美しさ」の表現として、以前よりも世の中の受け取り方があたり前になってきていると感じるものは?

※複数回答

個性的なヘアスタイル(ハイカラー等) 53.0%
メンズメイク 46.6%
個性的なメイク(カラーメイク等)46.1%
美容整形 45.8%
美容医療(美容整形以外) 36.6%
タトゥー 19.3%
ボディヘア(あえて脱毛や剃毛をしないこと) 19.1%
ボディピアス 16.5%
その他 2.1%

<考察>

前ページまでは回答者自身がそれぞれのテーマに対してどう感じているかを聞いたが、世間的にはどうなのか、受容度についても探った。結果「カラーメイク」「ボディへア」「タトゥー」の3つは個人がポジティブだと感じる数値よりも大幅に下落しており、「個人的にはいいと思っているが、世間ではそう思われていないと感じる」というギャップが浮き彫りになった。このギャップが、日本のビューティーレギュレーションの広がりを阻んでいる可能性は否めない。一方で4つのテーマの中で唯一「美容整形」だけはギャップ数値が少なく、世間と個人の受け取り方がうまく連動して広がってきた例といえるかもしれない。また、ここ数年で話題数が増加した「メンズメイク」は、世間的にあたり前になってきているという回答が半数近くにまでのぼっており「カラーメイク」とほぼ同等の市民権を得ているのは意外だと感じる人もいるのではないだろうか。日本のビューティーレギュレーションの中でも大きな変化が起きているテーマとして、今後も注目したい。このように、着実に変化
が見られる部分もあれば、変化に歯止めがかかっている部分もあることがわかった。次の設問では、日本のビューティーレギュレーションが広がるうえでのバリアが何なのかを探る。

Q,世界と比較して、日本における「美しさ」の表現には、規制や縛りがあると感じることはありますか?

ある:58.8%
ない:14.5%
わからない:26.7%

Q,日本における「美しさ」の表現に、規制や縛りがあると感じる理由は何だと思いますか?

※複数回答

世間や周囲からの反応を気にする人が多い 52.1%
学校や会社などの規則が厳しい 49.9%
美しさについて保守的な人が多い 48.5%
美しさを表現ととらえる人が少ない 40.3%
新しいことにトライするための情報が足りない 17.6%
新しいことにトライするためのアイテムや場所が少ない 13.2%
わからない 2.0%
その他:0.6%

Q,日本における「美しさ」の表現について、もっとバリエーションが広がったほうがいいと思いますか?

思う:64.9%
思わない:9.1%
わからない:26.0%

<広がったほうがいいと思う理由は?>
モデルが同じようなひとばかりで、イメージを植え付けられていると思う(29歳女性)
根底には、日本の同調圧力の強さがあると思う。それがさまざまなバリエーションの選択
肢を狭めている(47歳女性)
周りの目を気にせずにおしゃれを楽しめる世の中になってほしい(27歳女性)
海外のように色々な形の美しさがあっていいと思う(24歳女性)
美を追求する方法は色々あると思うから(48歳男性)
ルールが固すぎる会社が多いので、すぐ髪の毛の色も明るすぎると言われる(29歳女性)
外国の方から見ると日本人は皆同じに見えるという。もちろん人種のこともあるかもしれ
ないけれど多分メイクやファッションなどが大体同じということも原因のひとつだと思う
(45歳女性)

<考察>

世界と比較したとき、日本における「美しさ」の表現には規制や縛りがあると感じる人が約6割いることが判明した。その理由を見ると、世間体や同調圧力が日本のビューティーレギュレーションを広げる上で大きなバリアとなっているようだ。学校や会社の規則は形骸化しているものも多く、納得できないまま抑圧されているうちに、自己表現を楽しむモチベーションが薄れてしまうことも考えられる。そうなると、日本のビューティーレギュレーションに大きな変化は起こらない。しかし約65%もの人が、「美しさ」の表現について、もっとバリエーションが広がったほうがいいと思っているのが事実だ。「周りの目を気にせずにおしゃれを楽しめる世の中になってほしい」そんな意見が挙がっている。今回の調査を通して、日本のビューティーレギュレーションの“いま”が垣間見えた。ポジティブに変化している部分もあれば、そうではない部分もある。ただ、生活者の多くは「美しさにはもっと可能性がある」と信じているように思う。その希望を無下にしないよう、美容業界として何ができるのか、引き続き考えていきたい。

トレンダーズ株式会社
プランナー/SNSアナリスト
佐藤 由紀奈
WEBプロダクションでのコンテンツプランナーを経て、2014年にトレンダーズ株式会社に入社。現在はコミュニケーションプランナーとして食品・化粧品をはじめとする幅広い業界のマーケティング支援を行っており、生活者インサイトやSNSトレンドの 分析を得意とする。

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