Insight
本調査は2021年7月発行『ampule magazine Vol.01』から抜粋したものです。
該当記事および該当誌全編は、ampule magazine電子版のバックナンバーよりご覧ください。
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ampule magazine Vol.01「変わる“Beauty”、変わるわたしたち」
創刊号となる本号のテーマはBeautyを巡る意識の変化について。最近では広告クリエイティブに多様なモデルが起用されたり、SNSで「ルッキズム」についてたびたび議論が巻き起こったりと、Beautyの定義や意識が変化しています。日本におけるトレンド変遷や海外の最新情報、生活者情報調査などからこれからの時代の新しいBeautyと私たちの価値観の変化について考えます。
<調査概要>
トレンダーズ調べ
調査期間:2021年5月14~16日
調査対象:20~40代男女1,000名
調査方法:インターネット調査
<調査結果>
そう思う:59.2%
■美しいと感じる基準は人それぞれ自由でいいと思う(37歳女性)
■内面の美しさがもっと重要視されればいいと思う(36歳男性)
■肌が白い人や細い人に近づこうというコンセプトの CM が多いと感じる(28歳男性)
■テレビなどのメディアに露出している人たちが似たような顔ばかりなのが悪い。芸人さんなどの容姿を貶すような流れをつくらないような構成にしてほしい(27歳女性)
■雑誌のモデルなどを色んなタイプの人にしてみては? 流行りの細いタイプだけでなく、少しぽっちゃりしていたり、独特のヘアスタイルだったり、雑誌で分けるのではなくひとつの雑誌でそうする(45歳女性)
■「美しい」を固定化してしまうと、対極にある「醜い」「汚い」といった概念も固定化されてしまう(22歳女性)
■美を競うこと自体が間違っていると思う。そういう大会やイベントはなくしてもいい(44歳女性)
<調査結果>
感じる:34.0%
■ジェンダーレスの推進やコロナ禍により、今まであたり前と思って見ていた芸術 ( ミュージカル、映画など)を改めて観たときに、初めて美しさを感じた(29歳女性)
■一重の子のメイクなどが可愛いと注目されたりするようになった(25歳女性)
■ジェンダーレスに対しての配慮や男性がメイクをすることが広まりつつあると感じた(29歳女性)
■痩せていることが美しいという考えが変わってきたように思う(36歳男性)
■前までは痩せているのが美しいという考えが多かったが、ぽっちゃり系のモデル雑誌が発刊されたり、モデルショーでも選考基準に健康的な体型(痩せすぎは除外)が求められるものもあると数年前、報道で見た(27歳女性)
■美しいものはこうだ。と言うとそうでない人やその周りの人から差別である。と言われ、言論弾圧が起こるので大々的に美しくないと言えず、そう思っていなくてもそうだと言わざるを得なくなった(37歳男性)
<アナリスト 佐藤由紀奈コメント>多数の人が「Beauty に多様性は必要」と感じつつも、実際に変わってきたという実感は薄いのが現実のようです。
<図>上位はメディア・SNSから情報を得ている人が多数
美容に関する情報をどこで収集しているか、全体の数字を見るとテレビが1位であった。ただ、20代女性の回答だけで見ると、Instagram、Twitter、YouTubeが上位3位になっており、若い世代はSNSでの情報収集をメインにしていることがうかがえた。
現代は人気のインフルエンサーや美容系YouTuberなど、テレビや雑誌以外に情報発信をするコンテンツが溢れている。すると、「SNSでいくらでも情報が入ってきてしまう。真逆の情報もあったりして、何を信じればいいのかわからなくなる(27歳女性)」、「媒体によって言っていることが違う。時代が進むと少しずつ変わるのかもしれないがややこしい(36歳女性)」といった意見のように、「情報が多すぎる」と感じる人も見受けられた。お金をかけずに多くの情報を手に入れられるのはメリットかと思いきや、何を信じればいいのかわからず翻弄されてしまうこともあるようだ。
これに関しては、P5でも説明したパーソナライズ製品が今後注目されていく要因になり得るといえるだろう。また、情報過多を感じつつも、美容製品の方向性が結局似通っていることから「美しさの概念が一元化する原因になるのでは」という意見もあった。
上記は2021年5月に20~40代男女1,000人を対象にしたインターネット調査の結果をグラフ化したもの。
過半数が「Beauty には多様性が必要」だと回答しつつも、実際に変化を感じているのは3割程度に留まった。しかし世代別の回答を見ると、変化を感じているという人は20代が40.3%、30代が29.8%、40代が31.9%となっており、若い世代ほど Beautyの多様性に対して敏感な様子がうかがえた。
一方で SNS ネイティブであるこの世代は、「Beautyの流行」への追従が恐ろしく早い。そしてそれに対する反応を簡単に知ることができるのが、一種の麻薬のように作用している。たとえばSNS映えするメイクやアイテムがひとたび話題になれば、次々と同じような投稿がアップされる。「量産型」と呼ばれるやや自虐的なメイクが流行ったのがわかりやすい例だ。SNS は Beauty を多様化する可能性を秘めているが、一方で新たな固定観念を生みだしてしまう危険もあることを忘れてはならない。とはいえ、若い世代を中心に価値観の変化が生まれているのは間違いない。
本誌で紹介した様々な取り組みをヒントに、ひとりひとりが多様な視点を取り入れていけば、日本のBeautyは必ず進化していくはずだ。