Insight
インバウンド消費の拡大やK-Beautyの台頭により、日本のビューティーブランドは今、「選ばれる理由」の再定義を迫られています。海外消費者は、日本の製品に何を期待し、また購入のきっかけやハードルはどこにあるのでしょうか?
本インタビューでは、日韓の美容トレンドを熟知し、現在は日本で生活している韓国出身のプランナー/美容系インフルエンサーの南さんに、実体験に基づくJ-Beautyの価値と課題を語っていただきました。
「単なる品質の良さ」の先にある、外国人消費者の心を動かすマーケティングの核心に迫ります。

南殷善(ナム・ウンソン)
韓国ソウル出身。
小学生からコスメに目覚めた生粋のコスメオタクで、韓国在住時は大手化粧品販売店にて販売員として活躍。
2020年4月、新卒でトレンダーズ株式会社入社し、就職をきっかけに日本に移住。
日韓両国の美容業界や生活者インサイトを知っているということを武器に、現在はampule海外事業部にてマーケティングを担当。
自身も美容オタクであることを活かし、Xのインフルエンサーとしても活躍中。
ーー日本移住後、環境の変化による美容ルーティンの変化はありましたか?
日本に来て一番驚いたのは、強烈な紫外線と逃げ場のない湿気です。
韓国で経験した夏とは異なり、肌がリアルタイムで焼けるような熱気を感じる日本の夏。そんな猛暑では肌への刺激はもちろん、ベースメイクを維持することも難しく、徹底した「持続力」を求めるようになりました。
日本のベースメイク技術の持続力の凄さを、ここで初めて身をもって実感。
最も素晴らしいのは「皮脂テカリ防止技術」と「薄膜」が同時に叶う技術力です。完璧なベースメイクを持続させるには「厚塗り」と「固める」ことしかないと思っていたのですが、薄膜できれいな仕上がりなのにこんなに崩れないんだ!と驚いたことを今でも覚えています。
日焼け止めも同じくらい感動しました。

スキンケアにおいての最も大きな変化は、トナーパッドを卒業して、日本特有の「大容量デイリーマスク」でのケアが定着したことです。
最初は箱タイプのシートマスクに慣れていなかったので、衛生面などに抵抗がありましたが、実際に使ってみるとその使用感に魅了されました。
たった数分で驚くほど潤うのにお肌の表面はさっぱりしているので、今では化粧前やドライヤー時に必ずと言ってもいいほど愛用しています! 忙しい現代人の肌を救うJ-Beautyの代表的な名品だと確信しています。
ーー日本では常識だけど、韓国の人からみたら興味深い美容習慣は?
日本は「攻め」も「守り」のケアも非常に洗練されていますが、攻めのケアに慣れている私には「守り」のケアの考え方が印象的でした。特に驚いた習慣は2つ。
1つ目は、ビタミンCの先回りケアです。
美白だけでなく「毛穴ケア」や「朝の抗酸化ケア」として取り入れる概念が定着していることが印象的でした。朝に取り入れることで美白の先回り対策ができるところも面白いですし、ビタミンCをこまめに摂って日中の血中ビタミンC濃度を一定に保つという美容法も日本に来て初めて学びました。
そういった考え方がリポソーム型ビタミンCという製品にも表れていると思うので、ビタミンCのケアがとても進んでいるなと感じました。

そして2つ目は、日傘の常用。
単なる暑さ対策ではなく、熱老化や肌の過敏化を防ぐ「最強のエイジングケア」として定着していることに驚きました。韓国はまだ日傘の普及率が低く、私が住んでいた頃はもっと低かったので、「影ができればOK」くらいにしか思っていませんでした。
日本に来てから日傘そのものの機能性を理解し、日焼け止めとの上手な併用の仕方も学びました。
ーー日本の化粧品について、特に優れていると思う部分はどこですか?
「UV製品の技術力」です。
日本の日焼け止めの技術は本当に素晴らしいと思います。
韓国では、「使用感の心地よさ」を追求した製品が多いですが、日本の製品は心地よい使用感はもちろん、「スキンケア同様のケア効果」や「実質的な遮断効果」にこだわっているなと感じます。
特に、汗や熱に反応して遮断膜がより強固になる技術があると知ったときは驚きでした。痒いところに手が届いているなと。暑い日には必ずそういった技術が施されている商品に手が伸びます。
ーー逆に、日本の化粧品において課題だと思う点はありますか?
マーケティングや商品設計において、もっとグローバルな視点を取り入れる必要があるのではないかと思っています。J-Beautyの品質は世界トップクラスですが、コミュニケーションには課題があると感じます。
たとえば、ファンデーションの商品展開について。
彩度が高かったり、黄色みが強くて色が合わない商品が多く、実際に買い物をしているときに気になる訴求文言のファンデーションがあっても「どうせ私には色が合わないだろうな」と思ってしまいました。
ファンデーションに限らず、他のカテゴリーでも同じことを思ったことがあります。これだけのインバウンド需要や海外コスメの人気を考えると、せっかく興味を持ってもらえた商品を使ってもらえないのはもったいないといつも思っています。
また、ドラッグストアの売り場においても、情報のアクセシビリティの面で課題を感じました。情報過多なので、日本語がわからない外国人にとっては、自分に合うものを探すことは至難の業です。
店頭の什器を完全に外国人観光客に向けて作るのは難しいと思いますが、ほとんどの人が「日本に行ったらこれを買いたい!」と事前に買いたいものを決めてから来日するので、そのタイミングでしっかりと商品訴求できると良いなと思います。他社との違いを理解してもらい、購入意欲を上げる情報を提示して明確な商品認知を広げておくのはとても大事なコミュニケーションです。
現在情報が広がっている商品も、観光客の自発的な口コミで広がっているケースが多いので、ブランド側から海外に向けた正しい情報の発信・アピールをすることの重要性も感じています。
ーー日本ならではの「唯一無二の価値」とは何でしょうか?
「粉を扱う技術」が圧倒的だと思っています。
日本のアイシャドウ、ハイライター、チーク等が持つ「しっとりとした透明感」は唯一無二です。


肌に溶け込み、内側からじゅわっと染まるような水彩画風の発色は、J-Beautyでしか出合えない魅力です。
プレスドタイプだけではなく、リキッドに粉体を配合する技術もすごく優秀です。日焼け止めミルクの使用感の良さにもその技術が活かされていると思っています。
キャリーケースのスペースが限られている観光客の買い物で選ばれるためには、他商品より優先順位を上げてもらうことが必要となります。そのためにはまず「自国では絶対に手に入らない良さ」であることを納得してもらうことが重要ですが、日本のコスメ特有の質感を一度触ってもらうところまで誘導することができたら、購入の確度が上がると確信しています。
今回のインタビューから浮き彫りになったのは、J-Beautyが持つ「圧倒的な技術資産」と、グローバル・インバウンド市場における「コミュニケーションの乖離」です。
言語の壁を越えて商品を積極的に探し、数多の選択肢の中から「限られたキャリーケースのスペースを奪い合ってでも、自社の商品を優先してもらう」ためには、ターゲットの心理に基づいた精緻な戦略が不可欠です。
ampule海外事業部では、インバウンド対策のためのソリューションも強化しています。
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