Insight
「INNOVATION & COLLABORATION」をテーマにお届けした『ampule magazine Vol.15』。
前号に引き続き、業界の有識者の方に読後の感想を伺いました。
レビューをお願いしたのは、美容ジャーナリストのの鵜飼恭子さん。創刊時のエピソードにも触れていただきつつ、過去の特集テーマや業界全体への示唆も含めた素敵なレビューをいただきました。
鵜飼恭子(UKAI KYOKO)
美容ジャーナリスト&kitto編集長
香り診断(嗅覚反応分析士)
TBZティーンビューティゼミ主催
日本フェムテックマイスター協会評議員
美容誌MAQUIA(集英社)の編集者として創刊から13年在籍、MBA修得を経て、数々のメディアで美容のアドバイスやベストコスメ審査員を務める。2025年12月創刊のプラントベースのクチコミプラットフォームメディア「&kitto」編集長。嗅覚から肌・体・心のバランスを見える化する「香り診断(嗅覚反応分析士)」を企業や大学、医療機関、メディアで行う。2022年から10代向けに正しい美容を伝えるイベント「TBZティーンビューティゼミ」を主催。自身の20〜30代の美容代は30万円/月、現在まで約25年120ブランド/月の新製品を試してきた経験からトレンドセミナーも行っている。
ampuleがコロナ禍に創刊した衝撃を鮮明に覚えています。
「これは美容の最前線を知るだけでなく、志を高く持ち、ひとりひとりが改革者になれるシンメディアだ!」と。
その頃、私は創刊から在籍した美容誌MAQUIA編集部を卒業し、早稲田ビジネススクール在学中の2年目でした。さまざまな職業や年齢、国籍の同級生と交流するなか、これまで過ごしてきた世界での思考がいかに狭かったか、そして美しさの概念がいかに偏っているかを痛感し、多様性を求めていたところでした。
修士論文のために毎日3時間睡眠で論文と関連情報を読み漁っていたときに目にしたampuleが、視野を広めてくれました。
SNSは意識的に避けていた保守派でしたが、SNSの普及により商品がヒットするプロセスが変化していること、SNSにより美容が低年齢化しα世代が間違った美容でトラブルを起こしているのも懸念していました(その後、2022年にティーンに正しい美容を伝える「TBZティーンビューティゼミ」を立ち上げました)。
コロナウイルスの拡大により、美の価値観もあらためて見直されるようになり、「誰かのための美容」より「私のための1品」を求めるひとが増え、パーソナライズされたスキンケアの台頭をひしひしと感じていました。
美容業界のトレンドは、多様性により細分化され、大きなひとつの波を限定することは難しくなってきました。そんななかで大きな波が、K-Beautyであり、クッションファンデーションを皮切りに美容医療発想のダーマコスメや成分美容、ビジュアルとユニークなツールや使い方で目をひくメイクアップアイテムと続き、その人気の秘密を探るため日本の化粧品会社が韓国へ視察に訪れるほど影響を与えました。
キャッチーだし、美容って楽しい、シェアしたい、そんな高揚感とともに、日本のコスメが押されているさみしさも少し感じていました。
そんななか、ampuleのJ-Beauty特集。
日本の誇るべきところは「なぜ?」を深める基礎研究が進んでいること。何十年にも渡り地道に基礎研究を積み重ねることでノーベル賞の受賞にもつながりました。
韓国の得意なところは、戦略的にマーケティング的にトレンドを実用化できること。
基礎研究という土台がしっかりとある日本は、その知識を「どうやって?」に応え発展させることもできるはずです。それはタイミングであったりスピードであったり、ビジュアルやストーリーが重要になるのではないでしょうか。
日本の風土、素材、技術へのリスペクト。
ウェルネス志向、健康長寿。
機能性フレグランス。
発酵スキンケア。
近年のエイジングケアだと細胞老化やミトコンドリア、オートファジー。
より本質的な方向へ向かっていると思いませんか?
新しい美のカタチが生まれていることを私たちは感じています。

井浦氏は、家族やまわりを守りたいという願いが根底にあり、スキンケアを変えてもトラブルを起こす原因はなにか? 過剰な包装や在庫など足し算ばかりになっていないか? サービスとは本来なにか? という問いを持ち続けています。
片石氏は、他社の成功事例から学ぶのではなく、自分たちの時間軸や価値観をつきつめればそもそも競合という意識はなくなるのではないか、と考えています。
私が過去20年以上、異業種から美容業界へ参入してきた企業をみてきた経験では、「美容はもうかる」「すぐに結果をだせる」と考える企業も少なくはありませんでした。美容事業は一時的にヒットしても継続することは非常に難しい特殊な世界です。機能と情緒はセットであって、とくにスキンケアはストーリーと説明的要素があるうえで長期的視点が重要です。
そんななか、片石氏は美容事業は10年、20年単位で根付いていくものだと確信しています。その前にアパレル事業で成功をおさめ、アパレルと美容の違いを認識している。一般的に見落としがちなところを認識し、メイクブランドを成長させ、小嶋陽菜氏がフェムケアアイテムなどを扱うheart relationを子会社化して美容領域を広めており、今後も注目したい方です。
美容もアパレルもつきつめると土壌にいきつきます。モテマスカラやモテライナーのUZUを展開するフローフシ創業者今村氏は社長退任後は土壌づくりに従事、世界的なアウトドアブランドのパタゴニアは土壌を育てる活動を長く行っています。
井浦氏は九州に、栽培から蒸留までできる農園施設を設立しました。
片石氏は井浦氏の「土をどう配合するか」という言葉から、今後は自身のビジネスも原点に向かっていくのではないかとampuleで語っています。
本質をとらえ、進むコスメブランドは今後も増えていくのではないでしょうか。

さきほど、基礎研究と応用研究について触れました。
応用化が実ったブランドを特集した「ニッポンの技術が光る 異業種コスメ開発ストーリー」は、企業からみても、消費者からみても興味深い内容です。
なかでも富士フイルムは、写真のフイルムの劣化防止研究を進めるなか、フイルムの半分はコラーゲンでできていることから、ヘルスケア領域へ参入、今では売り上げの3割を占めるほどに成長しています。その背景には、研究者が開発した技術を、理系の知識がないメディアや消費者へも画像や数値でわかりやすく、何度も何度も伝え続けていることがあると感じます。
もうひとつ、吉野家ホールディングス。
吉野家といったら牛丼ですが、じつはダチョウのメニュー「オーストリッチ丼」もいただけることをご存知ですか? 世界的な食糧不足に着目し、牛肉と味が似ていて、茨城の農場で育てるところから始めたそうです。ダチョウといえばその羽根から加水分解ケラチンなど保湿性に優れたオイルがとれることから、浸透力が高いオイルを活用したスキンケアブランドも誕生しました。
独自の成分を開発し、異業種から美容へ参入した企業は、自社ブランドだけでなく、世の中のスキンケアにも活用されています。

コラボレーションは、企業にとっては新規顧客を獲得するための施策であり、消費者にとってはお気に入りのキャラクターにときめきながら、新しい美容が広がる高揚感も得られるコミュニケーションです。
肌に新しい出会いをもたらし、お得に試せるコラボレーションは、キャラクターのファンは数個買いをしたり、ギフト用にしたり、SNS投稿も増えるなどのメリットがあります。
ただし、意味のあるコラボレーションかどうか?
ここがポイントで、ブランドと親和性があるか、ストーリーに共通点はあるか、なにか接点があることで、消費者の心は動くのです。
見応えたっぷりの14ページ。
ampule読後は、インプットだけでなく、自分でも行動を起こしたいという気持ちにさせてくれる不思議な力があります。
美容ジャーナリスト
鵜飼恭子