Insight

2025年12月に開催した「Beauty Trend 2026」にて発表した美容トレンド予測を4つのキーワードに沿って解説します。

人生100年時代の本格化に伴い、健康寿命を延ばす=老化の進行をコントロールする研究が加速してきています。実際に、同じ年代でも昔に比べると現代人はかなり若返っているということをみなさんも実感しているのではないでしょうか。

最近では老化を引き起こす12個の要因が特定され、それぞれの要因に対して個別化された治療アプローチの研究が進んでいます。もはや「老化は避けられない」から「老化は科学的にマネージできる」へと発想自体が転換しつつあると言えます。

従来の「老化の進行を遅らせる」ではなく、「老化細胞そのものを取り除く」というアプローチは、時を戻すリバースエイジングの可能性も示唆する発明。単に老化を止めるだけではなく、部分的な若返りや機能向上が現実的になりました。さらに、再生医療技術の進歩により、エクソソームなどの化粧品への応用も現実的となり、ナイアシンアミドやグリチルリチン酸ジカリウムなどの基礎技術も確立されてきています。もはや、年齢を超越した理想的な老化を目指す「スーパーエイジャー」も夢ではありません。
今後は、肌だけではなく、脳、運動、精神活動を含む総合的ケアを行うホリスティック・アプローチが重要となってくるでしょう。
ビューティサイエンティスト 岡部美代治(MiyojiOkabe)



スキンケアでも老化細胞(ゾンビ細胞)に正面からアプローチするエイジングケアコスメが市場を牽引し、アイテム数もどんどん増えてきています。
こういった最新のテクノロジーを使ったアイテムを見ていると、時の流れを「止める」のではなく「巻き戻す」という、かつてはSFの世界でしか語られなかった可能性が、現実的な未来としてるもうすぐそこまで来ているということを実感します。

PREステップアイテムとは、いつものルーティーンにひと手間を加える予防発想のスキンケアのこと。
ここ数年、夏の猛暑が常態化し、強い紫外線や汗・皮脂、長時間の空調による乾燥など、肌にとって過酷な自然環境が続いています。特に2024年、2025年の夏は記録的な猛暑で、肌トラブルに悩まされたという方も多いのではないでしょうか。
こういった外的ストレスに加え、食生活や生活リズムの乱れなどの内的要因も重なった肌トラブルが起きやすい環境を背景に、季節の変化に負けない“土台作り”のケアとして、PREステップアイテムへの関心が高まってきています。
Q. PREステップアイテムを使ったことはありますか?

街のみなさんのリアルな声を聞いてみたところ、全体の約7割がPREステップアイテムを使ったことがあるという結果に。実際に使っている方々に聞いてみると、即効性の効果よりも、自己満足・安心感・予防・未来投資のために使用しているという意見が多く集まりました。
一方で、ネックとなるのは、時間・お金・情報の不足だという声も。
Q. PREステップアイテムを日々のケアに取り入れてみてどんな変化がありましたか?

ひと手間を加えたケアで自分を労ることで満足感を得ることができ、気持ちも上がるという点が多くの人の心を掴んでいるということがわかります。
トレンダーズ株式会社、スタイルアリーナ(日本ファッション協会)調べ
※調査実施日:10/10(金)、10/19(日)、調査対象:10~30代女性、調査エリア:表参道
有効回答数:36、調査方法:街頭調査

美容アイテムの細分化はどんどん進んでおり、ステップやアイテムが増え続けています。手間と時間をかけたケアと時短とコスパを重視したケアとで、より二極化が進んでいくのではないかと予想しています。
弊社の「ピュア ナチュラル プレミアム ブライトニング 美白導入美容液」は、ブースターとしての使用に加え、美白と角質ケアが1本で同時にできるという点をアピールすることで、手間が増えているというネガティブなイメージを払拭。ご使用いただいているお客さまの声としては非常に好感触です!
株式会社pdc マーケティング本部 商品企画
野中詩織さん

スキンケア市場におけるPREステップアイテムの伸長と定着の流れは、今後ヘアケア市場にも浸透するのではないかと考えています。日々のケアをより効果的にするための“仕込み”という考え方は、スキンケアに限らず、ヘアケアにおいても非常に理にかなったアプローチです。今後はPREステップアイテム市場がさらに拡大し、ラインアップも一層増えていくと見込んでいます。
シャンプー後のトリートメント効果をブーストするアイテムとして発売した「セラムイン ウォータートリートメント」は、30~40代の日々忙しく過ごされている世代の方々をターゲットにしています。
忙しい中でもプラスワンのケアを手間と感じさせないよう、わずか10秒という短時間でケアが完結し、なおかつ効果をしっかりと実感していただける点を重視しました。
その結果、美容家の方々からも高い評価をいただいており、Amazonなど各種モール等での売れ行きも好調です。
ヘアセオリーラボ ブランドマネージャー 橋本瑞季さん
洗顔前のプレクレンジングや、後続の浸透感・手応えを底上げする導入美容液(ブースター)が代表例で、認知・採用ともに拡大。肌悩みの改善を期待して取り入れる人も増えています。
ヘアケアでも、シャンプー前のブラッシングやプレシャンプー、地肌用セラム、さらにはシャンプー後〜コンディショナー前に用いるプレトリートメントなど、“前置きケア”に特化したラインアップが広がっています。



先回りして守る、先回りして整える――そんな考え方が支持を集め、どんどん浸透してきている様子が窺えます。今後はますます日常のケアに根付いていくことが予想されます。

在宅時間の増加によって根付いたホームケアが、いま“顔と髪の次”へと広がっています。
サードパーツケアとは、顔・髪以外の見落とされがちな部位を、部位別の専用アイテムで手入れする考え方。年齢サインが出やすい目元や首のケアはもはや定番に。近年は、頭皮、目(眼球)、口元、歯、デコルテ、デリケートゾーンなどの“見えにくい部分”“いままで見過ごされていた部分”へと意識が拡大してきています。
サードパーツケアを取り入れているという人の声は……

従来はリップケアやネイルケアなどが注目されていましたたが、近年は特にデリケートゾーンや目元、首元といったパーツのホームケア製品市場が拡大傾向にあります。また、パーツはリップ、バスト、ヒップ、背中、ハンド、フット、耳鼻……と、どんどん細分化が進行中です。
年齢的な悩みが増えてくる年代ほど、面倒だと思ってもサードパーツケアを取り入れている人が多く、特に目元や首元については多くの人が日常的にケアしているということがわかりました。
一方で、パーツケアを実践したことがないという人にとっては、時間とお金がネックになっているようです。面倒さを少しでも払拭できて、習慣化できるのであれば取り入れてみたいという意見が多く集まりました。
サードパーツをケアすることが自分自身の満足につながり、ケアする時間が癒しになっているという声も。外見だけでなく、メンタルウェルビーイングまで含めた“全身の印象値”を底上げできる点が支持されています。
トレンダーズ株式会社、スタイルアリーナ(日本ファッション協会)調べ
※調査実施日:10/10(金)、10/19(日)、調査対象:10~30代女性、調査エリア:表参道、有効回答数:36、調査方法:街頭調査
市場では、部位ごとの機能に合わせた処方・形状でピンポイントに効かせる専用アイテムが充実してきています。



一つのパーツだけをみても、ケアするアイテムの種類の豊富さから需要の高まりを感じます。今後も、季節や悩みに応じて選べるサードパーツケアは日常に定着し、ニッチなカテゴリもさらに拡張していくことが予想されます。

若年層から広がったメンズ美容が、いまやミドル~シニアへ本格的に拡大。男性の“ダン”にダンディの意味合いも込めて、日常的に身だしなみやスキンケアに取り組む中高年男性を「ケアダン」という呼称で注目キーワードとしました。
いまや若年層への美容はかなり浸透していることを多くの方が実感していると思いますが、最近は「普通の中高年男性」にも美容がじわじわと浸透中。従来は美容に無関心な層として認識されていた40代以上でも、洗顔・保湿・UV・頭皮ケアなどの基本ケアのルーティンが定着してきています。
ごく普通の中年男性が美容に目覚めた経緯をテーマにした書籍やエッセイ、SNSアカウントなども話題に。大手美容誌もメンズアカウントを開設するなど、メディアの動きも活発になっています。

日常的にスキンケアを実践しているという40~50代の男性に聞いてみると、加齢による見た目の変化をきっかけにスキンケアをはじめたという方が多くいらっしゃいました。そして実際にケアをしてみて効果を実感できると、手間をかける理由に納得して継続することができるとのこと。アイテムの購入先はドラッグストアが主流。価格帯は1,000円前後が目安となるようです。
また、美容への興味が薄く、スキンケアを実践してはいないという人も、身だしなみや清潔感は気にかけており、メンズスキンケアに対してはポジティブな印象を持つ傾向が見られました。
街頭調査では、中年男性のみなさんの美容意識の高まりを感じことができました。また、美容に関する知識についても老若男女に浸透してきていることを実感する結果となりました。
トレンダーズ株式会社、スタイルアリーナ(日本ファッション協会)調べ
※調査実施日:10/11(度)、調査対象:30~50代男性、調査エリア:新宿、有効回答数:17、調査方法:街頭調査

VOCEの男性向け企画でも40代の参加者が目立ち、一度美容を始めると非常に真面目かつ徹底的に実践する傾向が見られます。その傾向は女性よりも顕著。また遅く始めるほど効果の実感値が高いというのもポイントです。
メンズ向け商品棚もどんどん拡大していますが、同時に全体としてジェンダーレス化が進行しています。美容に詳しい男性ほど、メンズ専用商品を使わない傾向があるように感じます。
VOCE編集部 松本薫さん

男性にとって美容への抵抗が徐々になくなり、美容の楽しさに気づく方が増えてきていると思います。社内でも日傘をさす40代以上の男性がいますし、日焼け止めを塗るなどの紫外線対策も定着しているのを感じます。メンズ美容イベントに出展した際には、美容を楽しみ、積極的に情報を得ようとする方がたくさんいらっしゃったので、今後は情報発信をする方も増えていくのではないかと思います。
弊社の「マトメージュオム」の売れ行きも好調で、美容男子インフルエンサーとのコラボでAmazonでの売り上げが約8倍に!髪型が崩れてしまうという悩みへの共感や、手を汚さずにスタイリングを直したいというニーズの高さを改めて感じています。
ウテナ広報室 米谷絵梨さん
乾燥・テカリ・毛穴・シミ・くすみ・目元といった男性特有の悩みや、頭皮・ニオイ対策、エイジングサインに特化した新ラインが相次ぎ登場。一方で、性別を問わず手に取りやすいジェンダーレスなミニマルデザイン、くすみトーンのパッケージ、控えめで清潔感のある香りなど“誰でも使える”設計のアイテムも増えてきています。
特に支持を集めているのは、時短・簡便性を重視したオールインワン、トーンアップUV、眉・白髪・ひげのポイントケアなど「簡単で効く」アイテム。こういったアイテムをドラッグストアで気軽に入手できるようになり、男性が美容をはじめるハードルも低くなってきていることで、40~50代からでも美容をはじめる男性が増えてきています。
もともと成長中のメンズ美容市場ですが、ミドル~シニア世代が新たな成長エンジンとなり、今後さらに加速的に広まっていくことが予測されます。
4つのキーワードを軸に多角的かつ客観的な視点でトレンドを見てみると、日本全体の生活者の美容リテラシーが高まり、既存のケアから一歩進んだ、プラスアルファや細かいパーツのケアに目が向いていることがわかります。
先回りして守り、悩みは“ピンポイント”で解決して細部まで整える。また、見た目だけではなく気分やメンタルの安定を目的としたホームケアも広がり、年齢や性別を問わずに誰もが使いやすく続けやすいインクルーシブな設計が主流となってきています。
2026年は、世代や性別を超えた美容がさらに日常に定着していくのではないでしょうか。

スタイルアリーナ(日本ファッション協会)
2002年にスタートした情報発信サイトです。一般財団法人日本ファッション協会が企画・運営を行い「東京の『いま』を伝える」ことを目的とし、原宿・渋谷・表参道・銀座・代官山などの主要エリアで20年以上、定点観測としてストリートスナップを実施しています。現在は街頭インタビューを通じて、おしゃれな若者の生態や生活者インサイトを可視化・分析のほか、SNSにて動画の発信や自主調査を行っています。
WEB:https://www.style-arena.jp
Instagram:https://www.instagram.com/stylearena.jp/
一般財団法人日本ファッション協会:https://www.japanfashion.or.jp
イラスト:深川優
文:金子麻衣